テレビ東京の番組『開運!なんでも鑑定団』で中島誠之助さんがやきものを鑑定した時に「いい景色(けしき)ですね」という発言をよくされます。陶器のでき栄えの良さを評価する時のひとつの指標だからです。
窯の中の炎によって釉薬と土が溶け、流れ、固まる。温度や窯の中の位置、あるいは釉薬の種類、そして作り手である陶芸家も人間なのでひとつひとつ厚みや釉薬のかけ具合が違うから、それらの総合された結果として全く同じものはできない。歪んでいたり、釉薬が流れていたり、混じっていた小さな石が弾けていたり、そして貫入というひび割れもある中で自分が美を感じる1個があるはずです。その見た目が景色となって人を楽しませるわけですね。

流れた釉薬

西洋の磁器はサイズも見た目も同じように作られるのが一般的。個別に違いが出てしまったら欠陥品ということになってしまう。日本のやきもののルーツは中国ですが、その中国にも景色を楽しむというのは見られません。日本独特の美意識が景色という言葉で表れている。
ところが、昨今の日本人の好みは西洋に近い美意識に変化してきているのかきちっとしたでき栄えの器が好まれるようになっています。なかなか景色を楽しんでいるような方はいらっしゃらないように感じる。
大量生産された白を基調とした食器に料理を盛って食事をするのは何か和食だと味気ないような気がしませんか。自分の美意識にマッチした器を探し出して、料理がより美味しそうに見せてくれるつまり映える器で食事してみたいと思いませんか。

「ダイバーシティー」という言葉が一般的になっている。
人の多様性を認識し、尊重する世の中になりつつある今、和のやきものへの意識も見直されもっと景色を楽しむ使い方がされるのを期待してます。

和のやきもの「景色」を楽しむ
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